2014年6月28日土曜日

ロンドンで学ぶということ

世の中には何でもあるもので、有名な教育調査機関であるQSによるBest Student Citiesというランキングがあります。2014年版ではパリが1位でロンドンが2位なのですが、ロンドンで学ぶ大学生としてロンドンの魅力を考えてみたいと思います。

まず、QSによるとロンドンはランキングにカウントされている大学、教育機関が18もあり、世界で一番アカデミックな都市だそうでです。さらに文化、ナイトライフ、国際的な多様性といった指標でも高得点をあげているそうです。

ではなぜロンドンが1番ではないのか。これはズバリ物価と、家賃の高さによる差だといえると思います。ロンドンに来たことがある人は分かると思いますが、ロンドンの物価は異常です。例をだすと、地下鉄の初乗り運賃はOysterを使っても£2.4=¥408、サンドウィッチを中心部にある店で買えば£3.5=¥595です。これだけでもいかに高いかお分かりいただけると思います。
それに加えて、ロンドンは昔から世界各国の富裕層に人気があり、中東、ロシア、中国などの新興国の成金富豪たちが投機対象として住宅物件を買いあさっており、ロンドンの不動産価格上昇率は世界でも有数で、イギリス人でもなかなかいいところに住めないという状態です。

ではこれらのマイナスファクターがあるのになぜロンドンは留学生に人気なのか?それには大きく分けて3つのファクターがあげられると思います。まず第一にロンドンはイギリスの首都です。つまりもちろん公用語は英語です。第二外国語をやればすぐに分かりますが、英語は世界でも有数の習得が簡単な言語であり、同時にマスターすれば世界中どこでも使えます。ヨーロッパやアフリカの学生にとってはアメリカに行くより、地理的にも歴史的にもつながりがあるイギリス、そしてその中心であるロンドンを目指すのは自然でしょう。

第二に文化的なバランスがあげられると思います。ロンドンはイングランドの伝統を維持しつつも、常に新しい文化を吸収しており、文化的に非常に良くバランスがとれた都市だといえます。さらにロンドンには世界中の国から人が集まっており、食生活が貧しいといわれるイギリスの中では一番美味しいものが食べられるということも学生にとって重要な判断基準だと思います。

第三にやはり治安があげられます。世界にはロンドンのようなグローバルな都市はいくつかありますが、特にアメリカの大都市やヨーロッパの大陸側の大都市と比較すると断然治安がいいです。僕たち日本人からするとロンドンはちょっと怖いかもしれませんが、銃規制があるというだけでもかなり安心度は違うと思います。

これらのファクターは一般論なので、僕なりの視点を加えると、ロンドンで学ぶことの魅力はやはり「国際感覚」を得られることにあると思います。今ではニューヨークが国連本部さえももつ世界第一の国際都市ですが、一世紀以上にわたってロンドンはヨーロッパの、そして世界の政治と経済の中心地でした。そういう意味でロンドンは真の意味で国際的なキャパシティーがあり、そしてそこに人を引きつけるだけの魅力があるのではないでしょうか。大学で言うと、世界一位不動のハーバードでも留学生比率は20%くらいといわれていますが、ロンドン大学の系列カレッジでは留学生比率50%以上というのはざらです。この数字からもロンドンの国際度が分かると思います。

要するに、ロンドンで学ぶことはただ単にイギリスの首都で学ぶという物理的なことではなく、そこにいながら世界を知ることが出来る魅力的な都市なのです。


2014年6月17日火曜日

グローバルに働くのは難しくない。でもグローバルリーダーになるのはやっぱり大変

今まで、一ヶ月近くブログを更新していませんでしたが、その間にLSEで1年目の最初で最後の試験があり、なんとか乗り越えることが出来ました。結果はまだ分かりませんが、よく考えたら、外国の大学で、外国語を使い、現地の、そして世界のトップの学生と同じかそれ以上の結果を目指すということはかなり大変なことだと気づきました。

この気づきに関連しているのですが、実は今の時代、日本人にとって海外に出て学ぶ、働くということはそんなに難しくないと言えると思います。しかしながら、そのグローバルなコミュニティのなかでリーダーに なるのはやはり凄いことだと、クリスティーヌ・ラガルドIMF専務理事の話を聞いて思いました。

IMFという名前はほとんどの人が聞いたことがあると思いますが、具体的に何をしているかというと、各国の通貨の安定と国際為替の調整そして財政危機に陥った国の支援などをしています。(最近で言えばウクライナなど)

その性格上からIMFは絶大な権限と影響力があり、特に発展途上国はIMFの介入を非常に恐れています。そんな国際機関のトップになるには並大抵の能力では務まりませんし、各国の首脳陣から信頼されるだけの統率力が不可欠です。

しかしながらクリスティーヌ・ラガルドは本来のフランスのエリートとは全く違う道を通ってそこまで登り詰めた人です。彼女はシンクロのナショナルチームに所属したり、フランスエリートの登竜門といわれるグランゼコールの一つENA(国立行政学院)の試験に2度失敗して、米国系弁護士事務所のベーカー&マッケンジーで働いたりとかなり変わって経歴をもっています。

そんな彼女は英語が比較的に苦手というフランス人の中でも滑らかな英語を操り、法律から財務まで幅広い知識を持っています。そしてなにより、国際機関で生き残るための政治力をもった世界最強のキャリアパーソンの一人かもしれません。

今回僕が話を聞きにいったパブリックレクチャーは持続可能な経済発展と社会的公正の実現についてだったのですが、ラガルド氏の方風な経験と知見をもとに面白い話が聞けました。

ラガルド氏によると基本的に貧困削減や、途上国における女性進出を促進するためには3つのエンパワーメント(力を与えること)が必要だそうです。

まず第一にはそうした不公平な立場にいる個人のエンパワーメント。これは公平な雇用機会の創出や法整備、不特定住所に住む人々の信用アクセスなどを意味します。

そして第二にこれらの改革を進めるには公的機関、政府のエンパワーメントが必要です。これは途上国の政府の情報公開や、オンブズマン制度の導入によって達成されます。

第三に包括的にグローバル社会でこれらの問題を解決するために、多国間主義のエンパワーメントが求められます。これはまさにラガルド氏がトップをつとめるIMFや世界銀行、国連などの主要な国際機関をよりフェアな構造に改革し、多国間協力への参加を促すということです。

こうした概念的な話は今までも何回も聞いたことがあったのですが、言葉の重みがありました。男社会の政界や、外国人が不利な外資系企業で、渡り合ってトップをもぎ取ると言うのはやはり伊達ではないと思います。

ラガルド氏のパブリックレクチャーは真の意味で「グローバルリーダー」になることの難しさを改めて突きつけると同時に,それに対する憧れを強めました。