2014年5月1日木曜日

マイケル・サンデル教授による公共哲学の講義

試験が刻々と迫って来ているのですが、日本にいた時からずっとみたいと思っていた、マイケルサンデル教授の「なぜ投票するのか」についての講義にいくチャンスを得ました。

サンデル教授は公共哲学、政治哲学の第一人者であり、日本でもNHKで放送された「ハーバード白熱教室」で一躍有名になりました。

彼は「これからの正義の話をしよう」という著作からも分かるように、社会的正義、道徳、公共政策などの分野を得意としており、今回はBBCの"Public philospher"という番組の一環でした。

講義の内容について全てここに書くのは大変なので省かせてもらいますが、自分が大切だと思ったポイントだけ取り上げたいと思います。

さて、サンデル教授と言えば、その対話方式で進める授業が有名ですが、本当に聴衆との対話でずっと講義は行われました。

まず、彼はいったいどれだけの人が今月にあるEUの選挙で投票するつもりかを問い、ほとんどの人が投票する方に手を挙げる中で、投票しないと答えた人から議論をはじめました。投票しない人の言い分としては、現状の生活に満足していること、自分の票に価値がないこと、地方政治は自分に採って重要でないことなどがあげられました。

それに対してサンデル教授は投票すると答えた人たちになぜ投票するのかを問い、そこで大まかに投票には道徳的、公民的動機付けと、経済的動機付け(利益追求)が有るということが対話によって明らかにされました。

そこからは一人一人の票の価値がどのように理解されるべきかを極端な例を用いて、聴衆の心を引きつけながら議論はさらに深化していきました。

その間でた問いは、


・なぜ選挙における賄賂は不道徳、違法的だとみなされるのか?投票の棄権や不投票よりはましではないか?本質的に民主主義と選挙は集団的な賄賂ではないのか?あなたの票を自由市場で売買するのにどんな問題が有るだろうか?


・投票は合理的な行動なのか?あなたの投票を費用対効果分析で考えるとどうだろう?あなたの一票は本当に意義があるのだろうか?


など、普段は絶対に考えないような新たな視点からの投票の重要性を時にヒューモア交えながら、サンデル教授と聴衆の対話は続いていき、正解がない問題の難しさ、しかしそこについて思いを馳せることの大切さを肌で感じました。


サンデル教授は最後に「個人の投票は実は自己利益の嗜好を表現する手段に過ぎないが、そこに共同体の社会的方向、未来という要素が加わり、それを一人一人が意識することで尊いものになる」と結論づけましたが、全くその通りだと共感しました。


私たちが生きている社会には秩序があり、困っている時はある程度救いの手が差し伸べられ、個人の権利は守られています。しかしこれは政治哲学的に言うと、社会契約が成立しているからあり、その社会契約の根本的な要素である民主的統治を成立させるのは他ならぬ、私たちの一票なのです。


久しぶりに、表層的ではない、本質的哲学議論にどっぷりと浸かり快感を得ましたが、唯一後悔しているのは発言できなかったことです。15回くらい手を挙げたのですが駄目でした(涙)。でもサインはもらいましたよ!いずれにせよまたサンデル教授がLSEにくる機会があれば是非また聴講したいと思います!